ある日、根本的な疑問が湧きました。
私は今、受け取った配当・分配金をすべて再投資に回しています。生活費に使っているわけではありません。
だとすると、わざわざ配当という形で受け取って20.315%の税金を払ってから再投資するより、最初から分配金を出さないインデックスファンドを持っていた方が効率的なのではないか。
自分の高配当戦略を根本から否定しかねない問いですが、数字で確かめてみました。
※数値は2026年8月13日時点のものです。
まず、税ドラッグを計算する
特定口座で保有している個別株の状況です。
| 項目 | 数値 |
| 個別株の時価 | 17,393,160円 |
| 年間配当(税引前) | 471,022円 |
| 税引前配当利回り | 2.71% |
| 税引後配当利回り | 2.16% |
| 年間の税金流出 | 95,688円 |
| 実質コスト(税ドラッグ) | 0.55%/年 |
年間で約9.6万円が税金として消えています。資産全体に対する比率にすると年0.55%。
この数字を見て、ちょっと背筋が寒くなりました。オルカン(eMAXIS Slim全世界株式)の信託報酬は年0.05775%です。私は毎年、その10倍近いコストを税金という形で払っていることになります。
厳密には性質が違います。信託報酬は資産全体に毎年かかりますが、税ドラッグは配当部分にしかかかりません。それでも「見えないコスト」として意識しておく価値はある数字だと思います。
6年でどれだけの差になるか
総リターンが同じ7%だと仮定して、配当課税がある場合とない場合を比べてみます。
| ケース | 6年後の資産 |
| 配当課税あり(特定口座の個別株) | 25,307,478円 |
| 課税なしで複利(分配なしのファンド) | 26,102,443円 |
| 差額 | 794,965円 |
この前提では、6年後に約79万円の差が出ました。総リターン7%、配当利回り2.71%、税率一定という単純なモデルなので幅を持って見るべきですが、方向としてはインデックスに分がありそうです。
ただし「非課税で複利」は言い過ぎだった
ここで一度立ち止まります。上の計算では「分配金を出さないファンドなら課税されない」という前提を置きました。これが正確ではありませんでした。
オルカンやS&P500のようなファンドは、米国株の配当を受け取る際に現地で10%の源泉税を引かれています。これはファンドの内部で処理されるので投資家からは見えませんが、確実に発生しているコストです。
しかも厄介なことに、分配金を出さないファンドではこの外国税を取り戻す手段がありません。分配金に対する二重課税調整という制度がありますが、そもそも分配金が出ていなければ調整のしようがないからです。
オルカンは中身の約6割が米国株ですから、この影響は無視できません。「インデックスなら完全に非課税で複利が回る」というのは、少なくとも外国株ファンドについては成り立たない話でした。
ついでに用語も直しておきます。オルカンやS&P500を「無分配型」と呼んでいましたが、これらは商品として分配を禁じているわけではありません。運用方針として分配を抑制していて、結果的に実績がゼロというだけです。目論見書にも「今後の分配金の支払いについては未定」と書かれています。
NISAの中でも似た問題が起きている
ここまでは特定口座の話でした。では非課税のNISA内なら問題ないかというと、そうでもありません。
NISA口座で受け取った分配金を再投資すると、その分だけ年間投資枠を消費します。日本証券業協会も「収益分配金による再投資により購入したものも、受け入れた分は年間投資枠の利用金額に加算されます」と明記しています。
楽天SCHD、楽天日本高配当株、Tracersはいずれも分配金を出すファンドです。年間で数万円の分配金が出れば、その分だけ枠が削られます。一方、分配実績のないオルカンやS&P500は枠を消費しません。
非課税なのに機会損失がある。この構造には少し驚きました。
なお、分配金の再投資をNISA枠で行うか課税口座で行うかは、証券会社によって取り扱いが異なります。ご自身の口座設定を確認してみてください。
計算していて青ざめた話
そして本題です。NISA枠の残りを計算していて、見落としに気づきました。
NISAの生涯投資枠は1,800万円。私は「あと3.4年で埋まる」と考えていました。ところが調べ直すと、生涯枠1,800万円のうち、成長投資枠で使えるのは1,200万円までという制限があったのです。
私の現状はこうです。
| 枠 | 使用済み(簿価) | 残り |
| 成長投資枠(上限1,200万円) | 4,257,012円 | 7,742,988円 |
| つみたて投資枠 | 1,630,000円 | ― |
| 生涯枠 合計(上限1,800万円) | 5,887,012円 | 12,112,988円 |
成長投資枠の残りは774万円です。制度上の年間上限240万円をフルに使えば約3.2年ですが、これはあくまで上限の話。私の実際の積立は成長投資枠に月16万円、年192万円のペースなので、到達はおよそ4年後になります。分配金をNISA枠で再投資している分もあるため、実際にはもう少し早く到達する可能性があります。
これが何を意味するか。私がNISAで買っている高配当系の商品は、いずれも成長投資枠の対象です。つみたて投資枠では買えません。
つまり2030年頃、私が48歳になるあたりで、今買っている高配当ファンドをNISAで買い続けることができなくなります。残りの枠はつみたて投資枠だけになり、そこで買えるのはオルカンやS&P500といったインデックスファンドです。
生涯枠1,800万円はまだ1,211万円も残っているのに、高配当ファンドを買う枠だけが先に尽きる。この構造には気づいていませんでした。
枠が尽きた後に何が起きるか
成長投資枠を使い切った後、楽天SCHDや楽天日本高配当株から出た分配金には、再投資する場所がありません。
選択肢は2つです。現金として受け取って使うか、特定口座で買い直すか。後者を選ぶと、そこから先は分配金が出るたびに20.315%が引かれ続けます。資産全体に毎年かかるわけではありませんが、分配のたびに確実に削られるという意味では同じことです。
一方、オルカンやS&P500はこれまで分配実績がなく、ファンド内部で得た配当を運用に回し続けています(外国源泉税の分は引かれていますが)。分配のたびに課税される商品と、そうでない商品の差は、ここで効いてきます。
では、今すぐ乗り換えるべきか
ここまで書くと「早く個別株を売ってインデックスに乗り換えろ」という結論になりそうですが、そう単純ではありませんでした。
特定口座の個別株には現在、約247万円の含み益があります。売却すれば約50万円の税金が発生します。
6年間のドラッグ解消分が79万円、乗り換えコストが50万円。差し引き29万円のプラスですが、これは総リターンが7%で推移した場合の話です。
さらに35年という超長期でシミュレーションを回すと、意外な結果が出ました。7%ならインデックス化が有利ですが、4%だと逆転して、高配当を維持した方が資産が長持ちするのです。
低リターン環境では、分配金という自動的な現金収入があることで、下落局面に元本を取り崩さずに済む。これが効いているようです。
もっとも、この点は理論的には議論があります。「配当が出れば同額だけ株価が下がるのだから、必要な分だけ売却するのと本質的に同じ」という考え方もあり、ファイナンス理論ではむしろそちらが主流です。私のシミュレーションはあくまで一定の前提を置いた試算にすぎません。
結論:やるべきことは1つだけ
長い検証の末にたどり着いた結論は、拍子抜けするほどシンプルでした。
今すぐ個別株を売って乗り換える必要はない。前提次第で有利にも不利にもなる以上、50万円の税金を確定させてまで実行する根拠は弱いからです。
ただし成長投資枠を使い切った後、課税口座で新たに積み立てる商品については、分配金を出さないインデックスを優先しようと考えています。
分配金を受け取るたびに課税される商品より、必要なときまで売却を待てる商品の方が、税を繰り延べながら複利を回せるからです。少なくとも「配当は使わずすべて再投資する」という今の私の方針とは、この考え方の相性が良さそうです。
これも将来のリターンや税制次第で結果は変わり得ます。ただ、方針が決まっていない状態で枠が尽きる日を迎えるよりはましだと思っています。
そして今から3年ほどの間に、成長投資枠をどう使うかを考えておく必要があります。残り774万円をすべて高配当ファンドに充てるのか、それとも配分を見直すのか。ここは次回以降の宿題です。
効率の議論には限界がある
この検証を通じて感じたのは、「どちらが効率的か」という問いそのものの限界です。
7%なら答えはA、4%なら答えはB。そして将来のリターンは誰にも分かりません。
配分の最適化で得られる差が資産の1〜2%程度なのに対して、リターンが7%か4%かの違いは資産を数倍変えます。コントロールできない変数の影響が、桁違いに大きいわけです。
だとすれば、自分でコントロールできる変数に注力する方が合理的です。FIREの時期、生活費の水準、生活防衛資金の厚み。地味ですが、こちらの方がはるかに効きます。
次回は、実際に積立配分を4パターン作って35年間シミュレーションした結果をお見せします。答えは「ほとんど差がない」でした。
免責事項
本記事は筆者個人の記録であり、特定の投資手法や商品を推奨するものではありません。税制・NISA制度は改正される場合があり、記載内容は2026年8月時点のものです。個別の税務判断は税理士等の専門家にご相談ください。投資判断はご自身の責任でお願いします。


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