高配当ファンドがあれば個別株は不要? 23銘柄のYOCを全部計算してみた

配当金

ある日、ふと思いました。

「NISAで楽天・高配当株式・日本ファンドを積み立てているなら、日本の高配当銘柄を個別に持つ必要はないのでは?」

ファンドは多数の銘柄に分散しているため、1社の業績悪化による影響を小さくできます。銘柄選定や入れ替えも自動でやってくれるので、管理の手間も圧倒的に少ない。それなら、個別株を整理して、その資金をファンドに寄せた方が合理的なのではないか。

そう考えて、今回は自分が保有している23銘柄すべてのYOCを計算してみました。

前提の整理

まず、今回の比較で使う数字と条件を整理しておきます。

YOC(Yield on Cost)は「年間配当 ÷ 取得価額」で計算する、取得価額に対する配当利回りです。今の株価ではなく、自分が買った値段を分母にするので、保有中に増配が続けばYOCも上がっていきます。

前回の記事では「益出し」をした銘柄について、取得価額と実際に投じた現金が食い違うケースを扱いました。今回取り上げる23銘柄はいずれも益出しをしていないため、取得価額がそのまま実際に投じた金額です。今回は通常のYOCで比較できます。

数値はすべて2026年5月時点のものです。取得価額は当時のもの、1株配当は各社が同時点で公表していた今期の会社予想を使っています。3月決算企業は2027年3月期、12月決算企業は2026年12月期、積水ハウスは2027年1月期が「今期」にあたります。

比較する相手の利回りを確かめる

比較する相手は、現在積み立てている楽天・高配当株式・日本ファンドです。個別株のYOCが高いか低いかを判断するには、まず「ファンドならどのくらいの利回りなのか」を同じ基準で確認しておく必要があります。

このファンドは2025年2月の設定で、分配実績は2025年6月に100円、9月に105円、12月に110円、2026年3月に115円。直近1年の合計は430円です。基準価額が15,000円前後なので、実績ベースの分配利回りは約3.0%になります。

私は当初、「日本の高配当ファンドなら4%くらいはあるだろう」と何となく考えていました。ところが、実際の分配実績を確認すると約3.0%。設定からまだ1年ちょっとで、通年の実績も浅いため、この数字だけでファンドの実力を判断するのは早いと思います。それでも、今回の比較ではひとまず3.0%を基準にします。

23銘柄のYOC一覧

YOCの高い順に並べてみました。

銘柄取得価額1株配当YOC
リョーサン菱洋ホールディングス2,550円140円5.49%
LIXIL1,694円90円5.31%
川崎汽船2,549円120円4.71%
三菱HCキャピタル1,142円51円4.47%
商船三井4,700円205円4.36%
東京海上ホールディングス5,802円245円4.22%
日本ゼオン1,879円79円4.20%
日本郵船4,781円200円4.18%
積水ハウス3,525円145円4.11%
TOKAIホールディングス926円38円4.10%
日本製鉄638円24円3.76%
SGホールディングス1,450円54円3.72%
KDDI2,266円84円3.71%
武田薬品工業5,521円204円3.69%
みずほリース1,420円52円3.66%
ヤマハ発動機1,374円50円3.64%
三菱UFJフィナンシャル・グループ2,724円96円3.52%
NTT154円5.4円3.51%
ヒューリック1,912円67円3.50%
アステラス製薬2,491円74円2.97%
キリンホールディングス2,611円76円2.91%
花王3,018円78円2.58%
すかいらーくホールディングス2,911円26円0.89%

※日本製鉄は2025年10月の1対5分割、KDDIは2025年4月の1対2分割を反映した分割後ベースです。花王は2026年5月時点では分割前で年間156円の予想でしたが、同年7月の1対2分割後の水準に換算して78円としています(取得価額も分割後)。

結果:19銘柄がファンドを上回っていた

23銘柄のうち19銘柄が、ファンドの分配利回り3.0%を上回りました。下回ったのは4銘柄です。

この結果を見ると、当初の「ファンドがあれば個別株は不要では」という仮説は、少なくとも利回りの面では当てはまりませんでした。今持っている個別株をファンドに置き換えたからといって、利回りが上がるわけではありません。

理由はシンプルです。これらの銘柄は数年前に買っているからです。今の株価で新たに買えば利回りは3%前後かもしれませんが、私の取得価額は当時のまま。そこにその後の増配が積み重なり、YOCが押し上げられています。

たとえばLIXILは、取得価額1,694円に対して年間配当90円なのでYOCは5.31%です。今の株価で同じ株を買えば、利回りはもっと低くなります。この差を見ると、「早く買って長く持っていたこと」にも意味があると感じます。

KDDIで危うく判断を誤りかけた

この計算をしている途中、AIからKDDIのYOCが6.62%という数字が出てきました。保有銘柄の中で圧倒的に高く、「KDDIだけは絶対に手放すべきではない」という結論になりかけました。

ところが、ここには大きな落とし穴がありました。KDDIは2025年4月に1対2の株式分割を実施しています。分割前の1株配当をそのまま使っていたため、YOCが実際のほぼ2倍に計算されていたのです。

分割後の年間配当84円で計算し直すと、YOCは3.71%。23銘柄中13位で、全体の中では中位です。「KDDIだけが突出している」という最初の見立ては、完全に覆りました。

今回のことで、株式分割は配当利回りの計算で特に注意が必要だと痛感しました。私の保有銘柄では、ほかに日本製鉄(2025年10月に1対5)と花王(2026年7月に1対2)が分割しており、こちらも分割後の数字にそろえて計算し直しました。保有銘柄を分析するときは、配当額だけでなく、株式分割の履歴も一度確認しておいた方がよさそうです。

配当データは古くなる

もうひとつ、今回の計算で痛感したことがあります。配当予想は、思っていた以上に変わります。

日本企業の多くは5月に本決算を発表し、そこで今期の配当予想を出します。私も最初は、いくつかの銘柄で前期の実績や以前の予想をそのまま使っていました。

たとえば三菱UFJフィナンシャル・グループは、前期実績86円に対して今期予想は96円。前期の数字で計算するとYOCは3.16%ですが、今期予想なら3.52%です。東京海上ホールディングスも、前期218円から今期245円へと引き上げられています。

逆のパターンもありました。日本郵船の前期配当230円には記念配当が含まれており、今期の普通配当は200円です。前期の数字をそのまま使うとYOCは5.44%になりますが、今期予想では4.18%。1%以上も差が出ます。

YOCは分母である取得価額が固定されているだけに、分子である配当額の違いがそのまま結果に表れます。YOCを比較するときは、決算発表などのタイミングで配当予想も更新する必要がある。今回の計算で、あらためてそう感じました。

売却を検討する4銘柄

ファンドの3.0%を下回ったのは、この4銘柄です。

銘柄YOC状況
アステラス製薬2.97%ほぼ横並び。含み損あり
キリンホールディングス2.91%食品セクター、利回り控えめ
花王2.58%37期連続増配だが利回りは低い
すかいらーくホールディングス0.89%突出して低い

すかいらーくホールディングスのYOCは0.89%で、23銘柄の中でも突出して低い数字です。ただ、これには理由があります。100株だけ保有しているのは、年間4,000円分の株主優待券を目的としているからです。利回りだけを見れば売却候補ですが、私にとってはちょっとした息抜きのような位置づけなので、今のところ保有を続けています。

残る3銘柄は、数字だけでは判断しにくいところがあります。花王は37期連続増配を続けており、「今の利回りは低いけれど、将来の増配に期待する」タイプです。アステラス製薬も安定配当を続けています。YOCだけを見て機械的に売却すると、今後の配当成長を取り逃す可能性もあります。そのため、現時点ではこの3銘柄も保有を続けています。

海運3社は数字だけで判断しない

川崎汽船4.71%、商船三井4.36%、日本郵船4.18%と、海運3社はいずれも上位に入っています。ただ、YOCが高いからといって、そのまま「安心して持てる高配当株」と考えるのは危険です。

配当の推移を見ると、日本郵船は2024年3月期140円、2025年3月期325円、2026年3月期230円。川崎汽船に至っては、2020年・2021年3月期が無配でした。海運株は市況の影響を強く受けるため、業績次第で配当が大きく振れます。

一方で、各社とも株主還元を安定させる方向に動いています。商船三井は2027年3月期から205円を起点とする累進配当を導入し、日本郵船も年間200円を下限とする方針を示しました。川崎汽船は基礎配当40円に追加配当80円を乗せる構造です。

以前ほど極端な減配は起きにくくなっているかもしれませんが、業績や市況に左右されやすいという性質そのものがなくなったわけではありません。海運3社については、高いYOCだけを見て安心するのではなく、配当の持続性まで含めて考える必要がありそうです。

結論

「高配当ファンドがあれば個別株は不要か」という問いに対する、現時点での私の答えは「不要ではない」です。

23銘柄のうち19銘柄がファンドの分配利回りを上回っており、今持っている個別株をファンドに置き換えれば、少なくとも利回りは下がります。数年前に買った取得価額が低いまま残っていることと、その後の増配が効いているためです。

ただし、これは「個別株の方がファンドより優れている」という話ではありません。今から新規に買うのであれば、同じ銘柄でも現在の株価に対する利回りは3%前後になります。すでに含み益を抱えた状態で持っている銘柄と、これから買う銘柄では、同じ株でも判断がまったく違うのです。

そして、もうひとつ気になったのがYOCの性質です。YOCは分母が取得価額で固定されるため、増配すればそのまま数字に反映されます。この23銘柄を持ち続ければ、来年あらためて計算したとき、増配した銘柄のYOCは上がっているでしょう。一方、ファンドの分配利回りは基準価額や分配金の動きによって変わります。この違いも、個別株を長く持つ面白さの一つだと感じています。

一方で、23銘柄という数は、管理の手間を考えると明らかに多すぎます。今後の新規資金は基本的にファンドへ入れつつ、YOCの低い銘柄や保有理由が薄くなった銘柄から少しずつ整理していく。これが現時点での方針です。

次回は、さらに根本的な問いに踏み込みます。「配当を再投資しているなら、最初からインデックスの方が効率的なのではないか」という論点です。

免責事項

本記事は筆者個人の記録であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載の配当額・利回りは2026年5月時点の各社の会社予想に基づく概算であり、その後の業績修正等により変動します。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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